Hoffnung

映画&本 2007/08/13

僕の両手の日々の仕事を、

高貴な幸運よ、完成させたまえ。

どうか力尽き果てぬようにしてくれたまえ。

決して虚しい夢物語ではないのだから。

今はただ細枝にすぎぬこれらの木々も

いつかは実をつけ、陰をなすのだ。

(『ゲーテ詩集』より「希望」)









緒方貞子―難民支援の現場から (集英社新書) 緒方貞子―難民支援の現場から (集英社新書)
東野 真 (2003/06)
集英社

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冷戦後の10年間、国連人道機関のひとつであるUNHCRのトップとして世界の難民支援を指揮し、国際的に高い評価を得ている緒方貞子・前国連難民高等弁務官。頻発する危機や武力紛争の中で、彼女はどのように考え、決断し、行動したのか。同時多発テロ事件の後世界はどこに向かおうとしているのか。「人間安全保障」という考え方にはどんな可能性があるのか。???長時間のインタビューに関係者の証言を交えて、その人と思想を生き生きと描き出す。自らの生い立ちを日米関係史に重ね、人道主義を力強く描き提唱した、アメリカでの講演『日本、アメリカと私ーーー世界の課題と責任』を巻末に収録。
(本書背表紙より)


緒方貞子さんは、本当に素晴らしい思想と根性と信念を持った方だと、改めて思う。
自分が何を訴えかけたいのか。誰に。そして何に。
人道支援の過酷さ、国際政治の矛盾、互いのコミュニケートの難しさ。それらひとつひとつに具体的且つ経験をふまえた意見を述懐している。国際社会の在り方、日本の国際問題への取り組みの改善と促進、そして様々な歴史の重み。

深いなあ。

「セプテンバー・テープ」「ルワンダの涙」のような社会は映画を通して、殺戮や内紛や難民問題の重さを一面的だが知った。
そしてこの著作を読み、どれだけの人々が、こうした困難な問題に、全身全霊をかけて取り組んでいるのか、自身の胸に直接訴えてくる悲鳴と、どうしようもない焦燥感。

自分の判断と行動で、世界が動く。

今いる世界も、私も、彼らの努力と願いの上で成り立っている。

それのどの部分も欠けては成り立たなかった世界。それが今の世界。

もっともっと変えていかねばならない。解決していかなければならない。
どんな小さなことでも、それが大きな変動をもたらす、そういうことなのだ。

日本の持つ島国根性と国際社会には錆びた鎖が寄りかかる。
縺れたそれをほどく。
これが、これからの日本と、私たち日本人の考えていかねばならない「責任」。

自分のことで精一杯。みんなそうやって生きてきて、その上で世界と関わっている。
もはや知らん顔はしていられない。ということだ。

日本はアジアの先進国だが、日本がこれから国際社会にどうやって貢献していくのか、そこをもっと具体的にしていくべきだし、そこから戦中の「慰安婦問題」「戦犯合祀」の方向性というものが生まれるのではないか・・・。


むむむ。どんどんのめり込む。

皆、誰も苦しまないことを考えている。誰も苦しい想いはしたくない。

「責任」とはなにか。

それがどんなに重いものなのか。私はまだ知らない。



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映画&本 2007/03/25

峰山らしくなく、ミステリー&ハードボイルド系。う〜ん、やっぱ苦手っす。

噂
荻原 浩 (2006/02)
新潮社

「レインマンが出没して、女のコの足首を切ってっちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売策略通り、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。


正に衝撃のラスト。ちょっとぞわっときちゃいました。

噂というものは基本的に信じないのですが、「WOM」のビジネス戦略にはひかれるところがありますね。人から人への言葉の伝達を利用し、地獄へ突き落とす事もできる。
インターネットや携帯電話など、様々な伝達手段が発達した現代において、それはより恐ろしさを増す代物です。

本書には日本という国の不条理さ、経済の悪質な手段、そして警察内部の愚行と多くの視点から中傷的に描かれた部があります。まあ愚痴っぽい感じも否めませんし、なによりそれが本当かどうかなんて分かりっこない気がしますが。

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其レ、愚行ナリ

映画&本 2007/03/24

痴人の愛 痴人の愛
谷崎 潤一郎 (1947/11)
新潮社
生真面目なサラリー・マンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれ妖艶さを増すナオミの回りには、いつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。知性も性に対する倫理観もない”ナオミ”は、日本の妖婦の代名詞となった。(本書巻末抜粋)


愚行とは河合氏のナオミに対する異常な愛情のことを示してます。
いやー(汗・・・私はナオミに同情してしまいますかね。こんな変な男につきまとわれるなんてって。
「ナオミを自分の想い通りの女に育てる」と豪語しているわりに、いいように弄ばれている河合氏。そもそも、一個の人間を想い通りにしようという考え方が甚だ傲慢かと。
”愛”に依存し、翻弄されていく姿がなんともいえず痛ましく、女の私には到底理解できないです。いや、女には女の依存があるとは思うのですが。
うーーん、しかし本書ではとかく西洋と日本という2つになんだか笑えないところがあります。

(河合氏とナオミがエルドラドオのダンス会に出席した際知人の熊谷氏と踊っていたピンク服の女に関してナオミらが罵倒する場面)

「つまり馬鹿よ」
ナオミはだんだん自信を恢復したらしく、己惚れの強い平素の口調で、云ってのけて、
「顔立ちだって、いい事なんかありゃしないわ。あんな女を譲治さんは美人だと思うの?」
「美人というほどじゃないけれども、鼻も高いし、体つきも悪くないし、普通に造ったらみれるだろうが」
「まあ厭だ!何が見られるもんじゃない!あんな顔ならいくらだってざらにあるわよ。おまけにどうでしょう、西洋人臭く見せようと思って、色んな細工をしているところはいいけれど、それがちっとも西洋人に見えないんだから、お慰みじゃないの。まるで猿だわ。」(本文抜粋)

今となっては「色白で長身、鼻が高く、眼が二重で大きい」という正に西洋人的肉体構造の「美」が定着して憚りません(まあ好みもありますが)が、当時は差別も露だったようで。
「背も低く、寸胴でおちょこ口。のっぺりヒラメ顔」の日本人。
やっぱり西洋人の美しさには憧れますよねえ・・・正直。
しかしいくら似せようとしても、逆にまたそれがつりあわずに滑稽になるだけなんですね(苦)

性に対する倫理観。まあ、ところかまわずってのはいただけないかな。まあ。
(というか紹介なのに紹介らしくない文だなあ)

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『落日燃ゆ』

映画&本 2007/02/24

落日燃ゆ 落日燃ゆ
城山 三郎 (1986/11)
新潮社


東京裁判で絞首刑を宣告された7人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人達と共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。(本文巻末より)


峰山にしては珍しくも史伝もの。
かねてから靖国乃至昭和史について興味を持っており試しに購読。
なかなか面白かったですね。
というよりまあ、昭和史についていかに偏見の目で自国を観ていたかというのがはっきりと自分の中で分かった。

「風車、風が吹くまで昼寝かな」

外交とは何なのか、ということにも焦点をあてた秀逸な作品であると思いました。
A級戦犯の絞首者7名の死をどう捉えるかはとても重要であると。


この本に影響して、南京事件/満州事変/関東軍についてもっと詳しい資料はないかを検索中。



歴史は面白い、と同時に残酷。

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夢と現実『スターフィッシュホテル』

映画&本 2007/02/12

2本目。

『スターフィッシュホテル』

これはあれですよ。
正に安部公房や筒井康隆的空想世界です。かなり面白かったですよ・・・!

不思議の国のアリスを織り交ぜた、夢と現実の空間。
人間の暗闇を淡々と、ユーモラスに描いてる作品だと思いました。

安部公房、カフカのシュールリアリズム(超現実主義)にも似ているし、
「虚構であることを前提とした虚構」(超虚構性)を掲げる筒井康隆氏の作品にも精通している内容であると思います。とにかく摩訶不思議。
夢なのか現実なのかも分からずにストーリが展開していきます。
なにより感動したのは映像美。
赤の圧迫感を闇に捉え、夢と現実を区別するかのように白と黒と場面の明るさが極端に変わっています。素直にすげえ・・・!と思いましたね。

要は穴に落ちるんですね(意味深だなあ)。

兎角、この虚構世界乃至超現実世界には圧巻です。
是非観てみてください!

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